2010年8月7日土曜日

秋葉市長のこと

 原爆投下から65年目の昨日8月6日、広島では平和記念式典が行われ、戦後初めて国連事務総長やアメリカのルース駐日大使、英仏の代表らが式に参列した。
 これは昨年プラハでオバマ米大統領が行った核廃絶の演説を受けて、世界がほんの少し核廃絶に向けて動き始めた印かなと思う。
 勿論なぜオバマ大統領が今「核廃絶」を打ち出したのかについては色んな見方があると思う。
 冷戦時代は東西陣営の核バランスで一定の安定が得られていたが、2001年の9・11以後はアメリカは非対称の戦争に踏み込まざるを得なくなり、正規軍ではない、アメリカが言う所の「テロリスト」勢力からいつ、どんな形で攻撃を受けるか分らないという難しい時代に突入した訳だ。その中でアメリカが最も恐れているのがアメリカ本土が何らかの形で核の攻撃にさらされることだろう。これは貿易センタービルの攻撃を受けたアメリカの実感としての恐怖だと思う。
 それを阻止する一つの道として核の不拡散ー核廃絶が出て来たんだろう。広島と長崎の恐怖を今アメリカは心から恐れている訳だ。それがプラハ演説であり、今回のルース大使参列に他ならないと思われる。
 当然ながらオバマさんが本気で核廃絶を志向しているという考え方も成り立つ。そうであってほしいが、アメリカがそんな生易しい国ではないことは皆さんもご承知のことだろう。ホワイトハウス高官は「11月の日本訪問時に被爆地を訪れる計画は無い」とオバマさんが広島に行く考えが無いことを明らかにした。
 さて、広島市の秋葉忠利市長は記念式典の「平和宣言」の中でこう述べた。
 「今こそ、日本国政府の出番です。『核兵器廃絶に向けて先頭に立』つために、まずは、非核三原則の法制化と『核の傘』からの離脱、そして『黒い雨降雨地域』の拡大、並びに高齢化した被爆者に肌理細かく優しい援護策を実現すべきです。
 また、内閣総理大臣が、被爆者の願いを真摯に受け止め自ら行動してこそ『核兵器ゼロ』の世界を創り出し、『ゼロの発見』に匹敵する人類の新たな1頁を2020年に開くことが可能になります」
 この提言に対し菅直人総理大臣は平和式典に出席後広島市内で記者会見し
「核抑止力は、我が国にとって引き続き必要だ」
 と述べ、秋葉市長の「核の傘」からの離脱という要望にあっさりと冷水を浴びせてしまった。また、仙谷官房長官は非核三原則の法制化と言う秋葉市長の求めに対し「改めて法制化する必要は無い」とこれまた冷水で応えた。
 こうした民主党政権の核への対応については日本国内からは怒りや情けないという反応が噴出した。これは今に始まったことではないのだ。菅政権は完全に官僚にコントロールされた情けない政権に成り下がっているからなのだ。民主党に少しは期待した日本の有権者にとっては先の参院選で突如「消費税10%」持ち出し、普天間基地撤去問題でも早々と日米合意をして沖縄の人々の顔を逆撫でしたこの政権の正体が明らかになりつつある。
 嗚呼情けなや、情けなや!!!
 ところで、秋葉市長のことについて誰もが知らない話をここで明らかにしておきたい。
 秋葉さんは私がアメリカの新聞社で1年働いていた1982〜3年頃、アメリカ東部地区にあるタフツ大学の準教授だったが、その頃から「アキバ・プロジェクト」というプログラムを実行されていた。これはアメリカの地方新聞やラジオ、テレビ局の記者たちを8月の原爆記念日の前後に日本に送り出し、記者たちのヒロシマ体験記事を書いてもらうという試みだった。アメリカの草の根からヒロシマ認識を変えていこうというこのプロジェクトは日本の誰も考えたことの無い素晴らしいものだった。秋葉さんの核廃絶への行動は広島市長になる遥か以前から実行されていた訳だ。その延長線上に今日の広島市長としての秋葉さんがいて、それが6日の記念式典での「平和宣言」になっていることを知って欲しいのだ。
 「平和市長会議」という世界の市長4000人で作られている団体の会長は秋葉さんだ。
 秋葉さんはその意味で菅直人より遥かに世界的に知名度がある人物なのだ。
 その秋葉市長の核廃絶に向けての具体的な提言に菅総理は背を向けた。
 これが今の民主党政権の実態である。