2011年7月3日日曜日

福島原発循環注水冷却の評価の違い

 最初に御礼から。
 6月30日に出したばかりの本『がん患者』(講談社)について色んな方からメールを頂いています。皆さんに1人1人にお礼状を書くべきところですが、とりあえずこのブログ上でお礼を申し上げておきたいと思います。ありがとうございました。直接ご面識のない方でもFacebookなどを通じて感想が寄せられてもいます。ご家族にがんの患者さんを抱えておられる方がやはりと言うべきか多いなあ、という感じがします。そういう方の参考になればと思って出来るだけ平易に、分かりやすく、しかし、がん患者になるとどういうことが身の回りに起きてくるのかを出来るだけ具体的に書きました。
まだお読みでない方は早く読んで検診などがん予防を役立てていただきたいと思います。

 今日のニュースで気になったところをいくつか取り上げておきます。
 「循環冷却に完全移行 福島第一」
 これは3日付朝日新聞の一面に3段見出しで載った記事だ。
 記事によればこうある。
「東京電力は2日夕、福島第一原子力発電所で、敷地内にたまった放射能汚染水を浄化しながら原子炉に戻す『循環注水冷却』に完全に移行したことを明らかにした。循環注水冷却は、東電の事故収束に向けた工程表の最大の目標である『燃料の安定冷却』を実現する柱とされる。うまく続けば、汚染水が増えるおそれを減らせることになる」
 これは3月11日の震災以降原発が事故を起こしてからどうにもこうにも人間の手に余る様相を見せていた中で、初めてああやっとうまくいったのかあ!と思わせるニュースである。今回の原発事故で分かったことはやはり原子力の利用というのは簡単にはいかないという一事であった。一度壊れた原発は元に戻すには乗り越えなければならない壁があまりにも多い。この汚染水の処理と原子炉の循環冷却はこの3ヶ月間ずーっと追求されながら度々思わぬミスとか損傷で躓いて来たものだ。それがようやく実現したようなのだ。
 うーん、それにしては朝日の記事はあまりにもニュースバリューの判断が小さいなあ!と思わざるを得ない。1面だけど3段見出しの記事ではないだろう。これまでの経過からいえばもう少し大きく取り扱ってもいいんではないだろうか?
 そういう目で毎日新聞を見ると、こちらは1面の2番手のニュースとしてかなり大きく扱っている。見出しは
 「福島第一原発  完全な循環注水 実現」
 「汚染水増加食い止め」
 と、2本立てである。さらに「汚染水処理の流れ」とタイトルの付いた図入りで説明してある。これは毎日新聞はこの事態を重く受け止めてニュース価値の判断をしたことになる。朝日も1面にはわずか25行の記事だが、「6面=今後の課題」と注を入れて記事が続いていることを示している。しかし、その6面には今回の「循環冷却」にいくつかの疑問を提示していて、そういう判断があってああ、1面の記事の扱いが小さくなったんだなあ、と分かる。
例えば6面の記事にはこういう下りがある。
「冷却効果にも疑問符がつく。原発がもともと備える冷却装置がない。汚染水がタービン建屋などにたまったり、浄化処理されたりする間に自然に冷えることに期待したシステムだ」
 なるほど朝日は東電の発表を受けてちょっと眉に唾を付けながら、それでも一応ニュースとしては流しておこうか!と言う、その程度の判断だったのだろう。
 では毎日はなぜ朝日より今回の循環冷却完全移行に積極的な評価を与えたんだろうか?
 毎日の記事にはこういう説明がある。
 「東電はトラブル対策として、複数の系統でも安定的に注水するため、圧力変動などを緩衝させる機能を持たせた注水タンクを1日に新設し、より安定冷却できるようになった。
 当面、原子炉への注水は処理水のみを使うが、枯渇が懸念される場合、従来のようにダムからの淡水を貯水タンクを介して使用できるようにした」
 はっきり言って朝日と毎日では今回の「循環注水冷却」について評価が微妙に違うのだ。それが1面での記事の扱い方に表れたんだろう。
 どちらが本当なのか??私も専門家でないから分からない。
 この記事の違いに注目して今後の推移を見守りたい。